沖縄ではしか(麻しん)の流行があり、沖縄を旅行した人がはしかにかかり、名古屋市内の病院を受診したのをきっかけに、病院のスタッフもはしかにかかったと新聞報道があったことから、はしかに関するお問い合わせが増えています。今回の流行も前回同様、麻しんワクチンをしっかり受けていない20-30代の人が多いようです。今回は麻しんについてお話します。
どのようにして感染する?
麻しんのウイルスは、空気感染という方法で感染します。インフルエンザなどの風邪のウイルスは、飛まつ感染といって咳やくしゃみなどを周りに飛ばすことで感染しますが、風邪のウイルスが空気中の水分とくっ付くと下に落ちてしまいます。したがって感染者からある程度離れていればうつる可能性は低くなります。一方、空気感染ではウイルスが下に落ちずにずっと空気中に漂っているため、感染者から離れていても感染してしまう恐れがあります。このため、空気感染する麻しんウイルスは感染力が極めて強いとされています。
はしかの症状
はしかの主な症状は、発熱、咳、鼻水、目やに、目の充血、発疹などです。約10日間の潜伏期の後、38度前後の発熱と風邪様症状(鼻水、咳、目の充血、目ヤニ)から始まり、これらの症状は3~4日間続きます。その後、一旦熱は下がりますが、再び39~40度の高熱が出て、発疹が現れます。発疹は首や顔から始まり、しだいに体や手足へと広がっていきます。咳は熱と相前後して出始め、乾いた咳で発作的となり、発疹期にはさらにひどくなります。高熱は4~5日で下がり、次第に発疹も消えていきますが、色素沈着が1~2週間残ります。
はしかで怖いのは合併症です。はしかの感染により抵抗力が落ちると、気管炎や肺炎、中耳炎などの細菌感染を起こすことがあり、まれですが脳炎を起こすこともあります。まれに亜急性硬化性全脳炎という慢性に経過する脳炎を発症することもあります。
はしかの予防法
唯一の予防方法はワクチンを接種することです。その有効性は高く、ワクチンを受けた人の95%以上で麻しんに対する免疫ができますが、数%の人は免疫ができない場合もあります。現在では免疫力を高めるために1歳と小学校入学前(年長時)に麻しん風しん混合ワクチンを2回接種しています。
今回の流行では、ワクチンを受けていなかった人やワクチンを1回しか受けていない世代たちが感染していると考えられています。このため、定期接種対象年齢以外の人も、追加でワクチンを接種することが勧められています。
はしかの治療法
はしかに特効薬はありません。基本的には症状を和らげる治療となります。できるだけ無理をせず、安静にしてしっかりと水分を取ることが大切です。必要であれば熱さまし、咳止めを使います。肺炎・中耳炎などの細菌感染を合併した場合は抗生物質による治療が必要となります。
文責;北村和也